うつ病

うつは自分の中でネガティブな考えや感情を悶々と抱えている状態です。
うつ病は睡眠障害や再発の恐怖感や自信の低下、認知機能の低下などで何らかの形で生産性を下げる副作用を起こします。


普通の病気になったうつ病

現在うつ病の患者さんはどんどん増えています。
うつ病だけではく精神科や心療内科を受診する方も増えています。

何の病気であれ病気が増えるのには原因があります。
うつ病の場合にも原因があります。

1つには人の心と精神に影響を与える社会・文化的な相互作用がうつ病を増やすように働いているからです。
2つ目は心療内科や精神科への受診の垣根が低くなったことです。

昔はあった悪い偏見や先入観がどんどん減少しています。
特に都市部や若い世代でうつ病に全く偏見のない世代が出現しています。

うつ病をはじめとした精神科疾患は国が定める五大疾病の一つになり、普通の病気(common disease)になりました。
誰でも精神科や心療内科にかかる可能性は高いですし、障害に何度もかかる可能性も高くなっています。
うつ病を「こころの風邪」と表現したのはそのあたりのことを意識したのでしょう。


うつ病の症状

うつ病であればまず感情表出ができません。
感情が消失している場合もあります。

言葉を発しなかったり、言葉を発しても何を言っているか分からなかったりします。
疎通が取れなかったり、冗長だったり、迂遠だったり、滅裂であったり、妄想的であったりします。

行動も意味が分からないことがあります。
そもそも動けない場合が多いです。
食べることができず、現在であれば経管栄養などが必要になる場合もあります。

食事だけでなく日常生活動作が一切合切できずに寝たきりになったりします。
治療や看護以前に介護が必要になります。
もちろん動けたり意思疎通ができたりする症例もありますが、仕事も身の回りの世話も到底できません。

精神的に苦しんでいる場合もありますが、もはや知情意の表出がなされないか行動が意味不明になる場合もあり、緊張病という意欲障害と重なる場合もあります。

こういう場合、陽性症状は貧困妄想や罪業妄想や教務妄想などの妄想などであり、陰性症状は情動の消失や意欲の消失、生気や生理的欲求の消失などと考えられます。

以下のような症状は、一度、当院にご相談ください。

  • 憂うつで、気分が重い
  • 何をしても楽しくない
  • 何にも興味がわかない
  • 食欲がわかない
  • 疲れているのに眠れない
  • いつもよりかなり早く目が覚める
  • 何かにせき立てられているようでイライラする
  • 悪いことをしたように感じて自分を責める
  • 自分には価値が無いと思う
  • 思考力や決断力が落ちる
  • 死にたくなる など

うつ病の診断

うつ病の精神科の診断基準の1つで影響力が強いものでは、うつ病は本人の言葉や他人の観察によって示される期間や時間が定められた以下のような症状で診断されます。

(1) 抑うつ気分
(2) 興味や喜びの著しい減退
(3) 体重減少か体重増加、または食欲の減退か増加
(4) 不眠か過眠
(5) 精神運動焦燥または制止
(6) 疲労感か気力の減退
(7) 無価値観か過剰か不適切な罪責感
(8) 思考力や集中力の減退か決断困難
(9) 死についての反復的思考か反復的な自殺念慮か自殺するためのはっきりした計画

この9項目のうち5つ以上、特に中核的な症状である(1)か(2)は最低1つを満たせばうつ病と診断されます。
他に細かい条件はありますが、これがうつ病の診断独自の特異的な項目になります。

期間については2週間以上、時間について「ほとんど1日中」か「ほとんど毎日」というのを満たす必要があり、特に時間については足りない場合があり、その場合は適応障害など別の診断になることがあります。

ただしこれはアメリカのDSM5という診断基準で、わが国ではWHOのICD-10という国際診断基準が公的には使用されます。


うつ病の治療

ガイドラインや社会資源、法令や会社の対応、家族対応など含めてうつ病に対する治療の型のようなものはあり、それも年々進化しています。
精神科医学の進歩のみならず科学技術の進歩、保健福祉公衆衛生のみならず社会の発展の寄与があります。

診療は常に個別的でオーダーメイド的であるべきですが、しかるべきガイドラインもありますので、ある程度現在のうつ病知識の結晶であるガイドラインに素直に従って治療を受けていくのも大切です。


うつ病の治療で大事なこと

現在も精神医学に対する不信や偏見は残っており、明らかなうつ病と診断されても標準的な治療や服薬を拒否される方が少なくありません。
そうした方はやはり改善率が低く、再発、再燃、症状の残存や抑うつ状態の慢性化率が高い様に見えます。

例えば漢方薬なら飲んでもいいといらっしゃる患者さんがいられますが、なかなか科学的な有効性のエビデンスや、推奨度の高い漢方処方は見つかっていません。
そのためガイドラインの治療フローチャートにあるような治療を行うより、治療が上手くいかないリスクが高くなります。

そうしたリスクを説明した上で患者さんの意向を尊重して処方しますが、薬が効かなければラポール(信頼関係)も深まりませんので治療同盟を上手く作れません。
患者さんのこころを開くのも治療者の治療技術と言われればそれまでですが、うつ病は患者さんの人生、下世話に言えば生涯賃金やキャリアなどを大きく変える可能性があるので、患者さんには少しでも良くなってもらいたいので、治療が上手くいかないと大変な責任を感じますし、そういう気持ちを忘れないようにしています。

治療の選択肢

現在は薬剤や処方や治療技術も長年の積み上げで向上してきており、薬剤にしても依存、乱用、中毒、離脱症状、後遺症、やめられなくなるなどどれもない様に治療する選択肢があります。

薬は飲まないけどお酒を飲んで寝るなどの患者さんがいらっしゃいますが、お酒のアルデヒドという毒性物質やアルコール自体の早期毒性もあるため、睡眠薬をのまずアルコールを飲んで寝ることでアルコール使用障害になってしまえば本末転倒です。

誰でもいいですからドクターショッピングをした上で見つけた医師でもいいので信頼関係を築ける医師を見つけて最低限標準的な治療を受け入れるようにするのが目下もっとも良いうつ状態やうつ病への治療方法だと思います。


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