社会不安障害(SAD)

社会不安障害(SAD)

注目を集めることや人から見られることなどに恐怖を感じ、さらに動悸、手足のふるえ、吐きけ、発汗、息苦しさなどの症状が現れる状態です。人前に出ることを極端に避け、日常生活に支障をきたすようになることもあります。


比較的新しい疾患

社交不安障害は日本では古くから認知され研究されてきましたが、世界では認知されず研究もされてきませんでした。
わが国固有の精神疾患、文化結合症候群として「対人恐怖症」というものが一応認められていましたが、転機は1970年代に欧米でも対人恐怖症と同じような問題を抱える患者さんがいることが発見されてからです。
これにより対人恐怖症は日本固有の疾患とは言えず、欧米などでも見られる疾患というように認識が変わりました。そして世界の精神科疾患分類に組み入れられるようになり、社会不安障害、社会不安障害と名称を変えて現在に至ります。


社交不安障害の診断

不安と恐怖

現在の精神医学では「恐怖」という感情は焦点を与えられていません。
ただかつては不安と恐怖は不安症と恐怖症という形で分かれていました。

現在の国際診断分類では不安障害が恐怖症性不安障害とその他の不安障害に分かれています。前者が恐怖症で後者が不安症です。

前者は特定の恐怖症、広場恐怖、社交不安症がなどで、後者はパニック障害、全般性不安障害等からなります。 恐怖は対象がはっきりしている場合、不安は対象がはっきりしていない場合です。

例えば特定の恐怖症では高所恐怖症や先端恐怖症、広場恐怖症では人がいるところや人がいないところを恐怖する、社交不安障害は対人恐怖とイメージしてもらえばいいかもしれません。

一方その他の不安症では対象がはっきりしていません。
パニック発作は原因やきっかけがなくても起きますし、全般性不安障害は将来や経済的問題への漠然とした不安感です。

恐怖症でも恐怖対象に出くわすのではないかという不安が生じますし、パニック障害でもパニック時には恐怖を感じ、全般性不安障害でも恐怖を感じることはあります。
しかし現在の精神科では不安をメインに診断分類体系が作られています。

社会不安障害(SAD)

社交不安障害の症状

社交不安障害、社会不安障害、社交恐怖、社会恐怖、対人恐怖、緊張症、あがり症、赤面症、部分緘黙(選択制緘黙)などと言われるものは大体スペクトラムをなしていると考えていいと思います。

軽ければ対人緊張程度ですが、重度になると他の神経症群と同様、精神病、得意統合失調症と言っていい様な状態になることもあります。

ざっくりいうと症状は注目されることへの恥ずかしさ、不安、恐怖などです。
特に否定的評価をおそれます。

親密な人や赤の他人よりはその中間くらいの知り合い的な人に反応することが多いです。 あるいはスピーチや会議の席などだけで緊張するパフォーマンス限局型の場合もあります。 赤面や震え、嘔気、切迫した尿意や便意を覚えることもあります。

以下のような症状は、一度、当院にご相談ください。

人前で

  • 異常に緊張する
  • 手足、全身、声の震えが出る
  • 顔が赤くほてる
  • 脈が速くなり、息苦しくなる
  • いつもよりたくさんの汗をかく
  • 繰り返し吐き気がする
  • 口がカラカラに渇く
  • トイレが近くなる、または尿が出なくなる
  • めまいがする など

社交不安障害への治療

薬物療法と精神療法を併用することで治療効果が高くなると言われています。

薬物療法

脳内のセロトニンを高める薬は効果があることが多いです。
あるいは脳内のギャバ受容体に作動するベンゾジアゼピン系の薬剤も効果が認められます。
どちらも効果がない場合もあれば片方だけ、あるいは両方効く場合もあります。

βブロッカーという交感神経の緊張を緩和する薬剤を使う場合もあります。
併存障害も多いのでそういった障害に対処する薬物治療も行うことがあります。
症状が改善しても、再発を予防するためにしばらくは薬物治療を継続するようにします。

精神療法

社会心理的治療法はどの疾患でもよく取り上げられますが、時間や費用や精神的負荷がかかるので研究されているほどには臨床では行われていないか、行っても脱落率が高くなります。
認知行動療法は古くから研究方法が確立しておりどの疾患にも適応や効果があることが多いです。
わが国の誇る森田療法という治療法がありますがこの治療が受けられる施設は限定的です。

診療場面ではそれぞれの心理社会的な治療法のエッセンスを取り入れる形で診療に生かされることが多いです。
近年臨床心理士が国家資格化されましたので、心理社会的療法が広まっていく可能性があります。