パニック障害

パニック障害は「何の前触れもなく突然感情を揺り動かされる」障害です。
突然、息苦しくなり、めまいや動悸などに襲われる「パニック発作」を起こし、そのことで日常生活に支障をきたします。
この場合の感情とは不安や恐怖です。「死に至るのでは」と思うほどの激しい発作に見舞われることもあり、場合によっては救急車で医療機関に運ばれることもあります。


パニック障害とは

パニック障害は不安障害の一種とされます。
不安障害は神経症性障害の一種で、神経症性障害とは心因性の精神障害の一種です。
心因性の精神障害とは精神科疾患を内因性、外因性、心因性にわけたうちの「心因性」に含まれます。

外因性精神障害

怪我や病気、薬物などの物質で精神障害が起こされたものを指します。 これはアルツハイマー型認知症や外傷後の高次機能障害による精神障害、麻薬や覚せい剤、アルコールなどの精神作用物質による精神障害を指します。

内因性精神障害

統合失調症スペクトラム障害や躁うつ病、うつ病などの気分障害を指します。

心因性精神障害

不安障害、強迫性障害、ストレス因関連障害、解離性障害、身体表現性障害などの神経症性障害を指します。


パニック障害の症状

パニック障害は主に3つの症状からなり、これらが悪循環となってパニック障害を悪化させます。その3大症状のひとつが「パニック発作」です。
そして、発作を繰り返すうちに、発作に対する強い恐怖感や不安感が生まれます。これが2つ目の「予期不安」です。
また、逃げ場の無いような場所で症状が起きたらどうしよう、発作を他人や大勢の人に見られたら恥ずかしい、といった不安や恐怖から、大勢の人が集まる場所などを避けるようになります。これが3つ目の「広場恐怖(外出恐怖)」となるのです。
パニック障害が悪化すると、行動が狭まったり、人前に出るのを嫌って閉じこもるようになり、通常の社会生活を送るのが困難になります。

パニック発作

広場恐怖がある場合には広場恐怖が起きる様な状況でパニック発作が起こり、そうでない場合はまさに予期せず原因が分からずパニック発作が起こります。
感情的には恐怖感を中心とした混乱状態、身体的には自律神経症状を伴い、「死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」「もとにもどれないのではないか」などの思考や想像が生じます。
典型的にはこれが20~30分続いておさまります。
長くても1時間以内には消え、心電図や血液検査などをしても異常は認められません。身体的な異常が見当たらないのに発作を起こし、繰り返します。

予期不安

発作間欠期でもパニック発作が起こることに対する不安状態を伴うことを言います。

回避行動

パニック発作の出現を恐れて、以前にそれが出現した状況や予期不安が生じる状況などを回避しようとするようになります。

以下のような症状は、一度、当院にご相談ください。

  • 胸がドキドキする
  • 息が苦しい
  • 息がつまる
  • 冷汗をかく
  • 手足の震え、しびれ、顔の震えが生じる
  • 胸の痛みや不快感をもよおす
  • めまい、ふらつき、気が遠くなるような感じがする
  • 自分が自分でないような感じがする
  • 寒気、またはほてりを感じる
  • 発作による突然の死の恐怖に見舞われる

パニック障害の診断

現代の診断基準は客観性を重視します。
観察される行動と、やや客観性を欠くと思われるかもしれませんが本人の言葉から診断します。

そのせいか感情の種類については軽視する傾向にあります。
病名にも特定の感情の種類の名前が付いたものは少なくなっていく傾向にあるようです。

不安の対象

精神科では対象がはっきりしない場合を不安、はっきりしている場合を恐怖と習います。
国際診断基準では不安の対象がはっきりしている場合を恐怖症性不安障害、不安の対象がはっきりしない場合をその他の不安障害と中項目で分けています。

前者は不安の対象がはっきりしている特定の恐怖症、社交(社会)不安障害、広場恐怖、パニック障害などです。これは例えば尖端恐怖症であれば尖ったものを見ると恐怖を生じます。
後者は不安の対象がはっきりしないもので、全般性不安障害、分離不安障害、選択緘黙、パニック障害などです。
これらは対象がはっきりしないので恐怖が招じず不安ばかりというわけです。

パニック障害はどちらの感情も生じます。

パニック障害と広場恐怖

パニック障害は元々広場恐怖との関係で語られてきた障害です。
もともとは広場恐怖症の症状としてパニック発作が起こると考えられてきました。

パニック発作とは恐慌状態です。
不安や恐怖や慌てた気持ちや焦燥感が入り混じったもので、特に発作時には恐怖を必ず感じます。
つまりパニック障害という単一の障害はなく、広場恐怖として簡単にいうと人がいるところか人がいないところに恐怖を感じる障害だとされていました。

広場恐怖単独で言えばパニック発作が起こる場合もパニック発作が起こらない場合もあり得ます。そのため、逆の考え方も出てきました。
パニック発作が起こるから、人がいるところや人がいないところを恐れる「広場恐怖」が起こるのだ、という考え方です。

この場合、パニック発作が起こる原因はないか分からないかということになり、かつパニック障害が単独の障害で、付随して広場恐怖が起こる場合も起こらない場合もありえる疾患だと考えられます。

現在はそのどちらもあるかもしれないので両者を因果関係で結びつけるのではなく、独立した障害として、両者が存在する場合には重複診断を行うことになっています。


パニック発作の治療と経過

薬物療法について

発作自体については薬物療法である程度抑えることができます。
パニック障害に対する治療の基本は、抗不安薬や抗うつ薬による薬物療法です。お薬については個々の患者様の状態に合わせて、それぞれにふさわしい薬が処方されます。
完全に抑えることができる場合もあれば減弱したパニック発作様の症状が残る場合もあります。

薬物療法で発作はおさえられても予期不安は薬物療法では発作自体よりは効果が低い傾向があります。
つまり薬物療法により、発作がないのに予期不安が完全に治らない場合があります。
また回避行動も予期不安のように発作抑制の効果ほどには薬物療法の効果が低い傾向があります。

パニック障害自体完全に治ってしまうこともあれば、治ってもまた再発することも多いです。
また軽い自律神経発作というか動悸や胸部のそわそわ感などの減弱したパニック発作が治りきらない場合があります。

経過について

予期不安も難治化する場合もあります。
重症の不安ではないにしても不安が完全に消えない場合も良く見られます。
また予期不安がなくなることもありますが、なくなったと見えて実は回避行動だけ残っていて、予期不安が起こる状況を避けることで落ち着いているだけの場合もよく見られます。
これは回避行動だけが意識的にせよ無意識的にせよ残る場合です。

精神療法はある程度有効で、予期不安や回避行動に対する認知や行動の変容や修正が成功することもありますが、やはり完全には治らないこともあります。
パニック障害は罹患率も有病率も高い障害であり、若い時に起こりやすく学校や仕事などで時間がとりにくいこと、薬物である程度症状が改善する事から精神療法を行う患者さんの割合は少ないようです。

当院では患者様に寄り添った診療を第一に考え対応して参りますので、ご不安なことなど何でも遠慮なくお話ください。